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建設施工業、現場作業員、50代、男

2年以上前に辞めた会社のことです。もう、私個人が特定されることはないと思うので、あの最悪の経験を書かせて頂きます。
あのブラック会社以前に就く以前の私は、情報通信エンジニアとして東京のIT関連企業で働いていました。といっても、非正規雇用の派遣社員だったため、その立場は弱く、不安定な雇用でした。派遣先の業績が悪化した途端でした、その職場に5年以上貢献していたというのに、突然の雇止めです。

 
当初は、同業種への再就職を模索しました。しかし、その時点で私の年齢は50の大台を超えており、IT業界では高齢者の分類です。
そんな事情で私の再就職は、暗礁に乗り上げます。失業保険の給付は受けられたものの、それにも期限があります。
唯一の救いは、私が独り身だったことです(妻には、病気で先立たれました)。失業後、もちろん生活を切り詰めましたが、東京での生活は出費が多く、貯蓄は減る一方です。
そんな折、生まれ故郷近くに住む知人のまた知人から、情報通信関連会社への就職話を持ち掛けられました。でも、情報通信という言葉の意味を、紹介者が正しく理解していたとは思えません。彼は私の了解なく話を進め、その会社には寮もあるので住むところにも困らないはず。給料も今までと同等払うよう交渉してやると、強引に押してきます。
どこか、怪しい話だとは思いつつも、このままではいずれ生活に行きまるとの焦りがあったことは間違いありませんでした。の甘い判断が後に、最悪の結果を招くとは、その時点では知る由もありません。

 
私がそれまで専門にしていた情報通信と、紹介者の言うところの情報通信が、まったくの別物であるとわかったのは、引っ越しを済ませた後のことです。
なぜなら、彼が探していたのは、通信設備の施工作業員だったからです。短く言えば、携帯電話基地局の工事の仕事だったのです。
話しはそれますが、当時の携帯電話業界は、3GサービスからLTEサービスへの切り替えを急いでおり、そのため猫の手も借りたい状態だったのです。
紹介者は、そのブラック会社から謝礼目的に、手当たり次第に人を集めていたらしいです。はなしが決まってすぐ、連絡不能になったのは、悪意があった証拠だと思います。

 
引っ越しを済ませたその晩、会社の現場責任者だと名乗る男から、電話が入りました。引っ越し先は、LDKのアパートだったのですが、使っていいのは一部屋だけと唐突に言われたのです。明日、もうひとりが引っ越してくると。
同居人がいるなんてはなし、ひとことも聞いませんでした。私は、ただただ混乱しました。責任者は、明日の朝午前8時、指定した場所で待てともいいました。土地勘があまりない私は、詳しく場所を確認しようとしましたが、それに対する彼の答えはこうです。
「難しい理屈こねるな!」
なんという理不尽さ。ただ圧倒されるだけで、それ以上なにも言えません。なんとも、情けない。でも、もう従うしかないのです。いまさらもう遅い。私には、もう行くところが無いのです。

 

翌朝、言われた場所に向かいました。指定されたのは、バスすら通らない、工業団地のはずれ。私は早起きし、徒歩で約束の場所に向かいました。そして、言われた場所で銀色のハイエースを待ちました。
ところが、時間を過ぎても待ち人は現れません。午前9時を過ぎた時、昨日掛かって来た電話番号に問い合わせようかとも思いました。でも、そんなことをそれば、責任者の逆鱗に触れそうです。また、理不尽に怒鳴られる。そう思うと、電話もできません。

 

結局、2時間待たされました。責任者の車が到着したのは、10時過ぎでした。運転していたのは、坊主頭で色黒の大男です。ジロっとした目つきで、私を頭の先からつま先まで睨みつけ、こういったのです。
「あんた、大丈夫かよ?」
どうやら彼は、二日酔いの様子です。酒気帯び運転ほう助なんてしたくない。さらに悪い事に、私のほうが年上なのは一目瞭然。なにも言えないまま、そのままハイエースに乗せられました。その場で辞めてやると言えなかった自分が馬鹿だったのです。
最初からこんなです、その後の経過がいいわけありません。なんと、仕事は高所作業です。私には経験すらありません。いきなり高い鉄塔の上に登らされ、ほかの先輩方に怒鳴られながら、重い機材をロープ一本で釣り上げ、それを指定された位置にボルト止めする。この仕事のどこが情報通信なのでしょうか。

 

 

先輩方の中には、良い人もいました。責任者を嫌っている人も少なくありませんでした。でも、なぜか誰もが短気です。
朝から日が暮れるまで、くたくたになるまでこき使われました。でも、もらえた給料は以前の半額以下。責任者は、仕事を覚えたら上げると言っていました。しかし、その会社で働いていた一年半、結局一円も上がりませんでした。

 

あの会社から欠けていたものを上げればきりがありません。昇給:なし、残業代:なし、社会保険:なし、雇用保険:なし、ないもの尽くしです。労災すら加入していたかどうかもあやしい。
コンプライアンスの欠如。いや、そうではありません。最初からそんなものは無視なのです。理由は、下請けの下請け、さらにその下請け。曽孫請けでしか仕事が取れない、弱小会社だったからです。
一年半後、私は会社を辞めました。取れない倦怠感。不眠と頭痛。不調で、仕事が続けられなくなったからです。あまりにも症状がひどくなり、通常の内科を受診しました。しかし、心療内科、もしくは精神科を受診するよう医者はいいました。

 

そして、専門医の診断は、精神疾患だったのです。

 

私の精神が破綻した直接原因。それは、あきらかです。あの責任者から毎日のように罵倒され続けた結果です。
彼は、ことあるごとに弱い立場の人間を怒鳴り続けました。ただ怒鳴るだけではなく、仕事上の失敗を下の者に押し付けて怒鳴りました。
これが、私の知るブラック企業の実態です。私のように精神疾患に陥ってしまう前に、ブラック企業で働く皆さんに言いたいことがあります。
「一日も早くその会社を辞めて下さい」