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会員権販売・24歳・女性

クレジットカードの会社でOLをしていた私は全然別の業種に転職したいと考え、求人誌を見て秘書という職種で転職したはずでした。ところが入社してみたら会員権の販売をする業務につかされました。

高校卒業したての世の中のことなど何も分からない人を対象にしていたのです。価格は法外に高いものでした。そして世の中のことがわからないのは当時の私も同様でした。この仕事を乗り越えれば秘書の業務につけるのだと信じていたのです。

 

 

女性でも平気で自分のデスクで喫煙していたり、同僚の言葉遣いなどもなんとなく柄が悪いということは感じていたのですが、やっている業務は市役所や区役所へ行って住民票を閲覧しては販売対象の年代の人たちのリストを作成していました。

会社の段ボールの中にはどこから入手したのか、高校や大学の名簿がいっぱい入っていました。その中には自分の大学のものまでありました。

 

そしてその名簿や住民票を閲覧して作ったリストをもとに電話をかけて営業活動を行うのです。まず、会員権の販売などということは口に出しません。お知らせしたいお得な情報がある、みんなも使っている、などとうまいことだけを並べるのでまだキャッチセールスや電話による詐欺などが問題視されていない頃だったせいもあって興味を持つ若者は結構いました。

 

 

興味を持ってくれたら喫茶店などで待ち合わせをして会員権の案内の入った分厚いバインダーを抱えていきました。そしてフレンドリーに話を進めていくので断りにくくなって契約をしてしまう人が結構いるのです。

会員権というのは会員になると映画、ホテル、買い物、航空券などが安くなるというものなのですが、50万円以上もするもので、会員権を買っていくら利用したとしても元を取ることは難しいと思われるものでした。

 

 

もちろん、クーリングオフというものもあります。でもそんなことを知らないという人も多いのです。

契約をしてしまって毎月の支払の負担に気づいてキャンセルに来る人もいました。キャンセルするのに時間がかかってしまってクーリングオフに間に合わなくなってしまうというケースもありました。

それはわざと間に合わなくするために時間をかせいでいるという悪質はものでした。

 

 

また、デートコンパのようなものを企画していて、そのためのチラシを作ったりもしていました。そしてそのビラを街頭で配布するという作業までありました。私はこれを拒否したため、この作業はやりませんでした。

このビラというのは下着姿の女性の写真が写っていたり、まるで風俗のビラのように見えました。

 

 

そして私たち、この会社で働く人の労働条件ですが、福利厚生は一切ありませんでしたので、自分で国民保健、国民年金に加入し、支払う必要がありました。有給や残業代は一切ありません。

「事務職なら残業代がある、でも営業職の場合は残業代はない」、というのがここの経営者の口癖でした。でも私は営業職として入社したのではなく、秘書の業務で入社したはずなのです。

 

 

もともと、秘書など必要ではなく、この営業の仕事をする人材を集めているに過ぎなかったのです。経営者や上司に秘書が必要であるような様子は全くなく、スケジュール管理などはされている気配もなく、すべてが行き当たりばったりで仕事をしているという状況でした。

求人に本当の業務内容を書くと応募が来ないため、こうして毎週のように求人誌に秘書募集の求人を出していました。給料はかなり多かったため、応募してくる人はかなり大勢いて、毎日のように面接に来る女性がいました。

 

そして、面接に来るとほとんど採用になるのですが、やめていく人が大勢いました。そしてやめていく人にはお給料など支払われなかったのです。私もやめた最後の月にはお給料をもらいませんでした。

そしてこのお給料というのは基本給などというものは一切なく、営業をして契約が取れたらいくら、という完全歩合制だったため、営業成績のいい人はかなりの高収入を得ることができますが、そうでない場合は収入はあてにできるものではなかったのです。

 

 

今だったら労働基準監督署に通報するという手段も考えられますが、当時はそんなことは考えられず、ただ傷つき、自分の馬鹿さ加減に嫌気がさしていました。気持ちを切り替えて立ち直り、次の仕事を探そうという前向きな気持ちになるまでに時間がかかりました。

求人広告に記載してあった高収入の金額につられてしまった私が確かに浅はかであり、自分のやりたいことが明確でなかったために自分に降りかかった災難なのだと今になって思います。そして、いい経験、いい勉強をしたとも思います。この経験のおかげか、自分の感覚を信じるという習慣がつきました。

 

 

この会社にいる時、何かおかしいなと思いながら、そんなはずはない、と自分の感じる気持ちを打ち消してその会社で働いていたことを思い出すのです。自分がおかしいと思ったらやはり何かがおかしいのです。そんな自分の感覚を信じないなら、何を信じるというのでしょう。それがこの経験で得た一番の収穫です。