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機械メーカー・営業・30代前半・男性

機械メーカーに中途入社したのですが、その会社の配属先の部署はゴルフがすべてにおいて最優先される、ゴルフがすべてを支配する部署でした。
入社した時は10人くらいの営業職のうち9人がゴルフをすると聞いて、よほどゴルフ好きが集まっているのだなというくらいにしか思いませんでしたが実際は部長に強要されていただけでした。

 

50代の部長は大のゴルフ好きでゴルフ歴も長いのでスコアもなかなかのものです。以下40代の課長代理、30代の係長、20代の若手まで皆が皆ゴルフをします。スコアも大体役職順になっています。その中で1人だけ40代の平社員がいてその人だけゴルフをしません。

生え抜きで、仕事もはっきり言ってできる社員なのに出世できずに万年平社員なのは、ただ単に自身が所属するサッカーチームの活動を優先してゴルフをプレイしないからです。

最初はそんな馬鹿なと思ったのですが、部長の口から「あいつは仕事ができるけど、営業職として必須のゴルフをやらずに遊びのサッカーにうつつを抜かしているから、いつまで経っても出世しないんだ。お前もそんな風になるなよ。」と言われたので、耳を疑いましたが本当でした。

 

 

それでは、仕事で得意先との接待ゴルフがそこまでたくさんあるのかというと全然そんなことはありません。むしろ、得意先の若手が当社のゴルフ大好き部長に気を使って年に数回付き合っているというのが実際のところで、部長がやりたくてやってるだけとしか思えません。

もちろんそのゴルフ接待が営業成績に結びついているとも思えません。実際に上記のゴルフをしない平社員は営業成績トップクラスです。とにかく、部長が営業だからゴルフをたしなむというのを口実に部下にゴルフを始めさせ、自分のほうが歴が長いから高いスコアを出して優越感に浸るだけの、部長の自己満足にすぎないのです。

 

 

とはいっても、私もゴルフを始めなければならないときがやってきました。部長たちが2週間後に迫った部内ゴルフコンペの相談をする中で、「お前も出るか?」と私に声を掛けてきたのです。

クラブを握ったこともないのに2週間後というのはとんでもないのですが、選択の余地がありません。私は二つ返事で参加することになりました。たったそれだけのことで部長から「お前は見どころがある。」と言われ入社して間もない私の株が急上昇しました。

 
とはいっても部長が古いクラブをくれたり、指導してくれるわけではありません。私が自分で他部署の先輩に頭を下げて回り、そのまた知人からおんぼろのクラブを譲ってもらうことになり、一度だけ打ちっぱなしに行って2時間だけ練習しました。

後は、書店で買ったゴルフ初心者の入門本を見てルールを必死で勉強したくらいです。

 

 

ゴルフ経験者の方ならわかると思いますが、たった1回の打ちっぱなしでコースデビューは、マナーやルールが多いゴルフでははっきり言って無謀そのものです。

スコアの付け方もわからないまま、誰にもケアされず、戸惑いながら炎天下のゴルフ場でカートに乗ることもできずに私はただ走り回りました。初心者は走って誠意を見せるということでしか、部長の機嫌を取れないからです。

スコアはおまけしてもらいながらも200オーバー(カウント不能)という状態でしたが、参加したということだけでなんとか部長の機嫌を取れたと思いました。

 

 

しかし、終了後のクラブハウス内のミーティングで、皆は襟付きのポロシャツで出席しているのに自分だけVネックのTシャツで出席してしまったことで叱責を受け、その日に上げた自分の株は台無しになりました。

プレー中のゴルフウェアは襟付きのものを着るのがマナーだということは入門本で読んでなんとか知っていましたが、プレー中以外のクラブハウス内でもそれが必要とは知らなかったのです。

そもそも、そんなことはどこにも書いてないし、誰からも聞いていません。終了後にミーティングがあるのが、ゴルフコースすべての共通認識なのか、そこで襟付きを着るのがゴルフ界での常識なのか、その会社だけのローカルルールなのかもわかりません。

 

とにかく、2週間後のゴルフコンペに意欲的に挑んだことで上がった私の株は、襟なしシャツの件で下がってプラスマイナスゼロになりました。

その後も、仕事は普通に覚えて、期待通りの働きをしていたつもりですが、部長は口を開けばゴルフばかり。

私にゴルフの心得を説くふりをして、教えるのではなくただ自慢をしたり武勇伝を語ったりするばかりです。飲みに行けば他部署の誰々がゴルフでインチキをしたとか、あいつはゴルフをいやいややっているからけしからんとかそんな話ばかりです。とにかくすべての基準がゴルフなのです。

 

ちなみに武勇伝というのも、部長が午前中に自宅から直行で客先に営業に行っているはずの日に、部署の社員がケータイに連絡したら、電話口の後ろでパコーンという明らかにゴルフの打ちっぱなしの音がしたというものです。

普通に考えたらいい年した部長ともあろう人間がうそをついて営業をさぼって打ちっぱなしに行っていたなんて恥ずかしくて仕方ないことなのですが、この部長に言わせると笑い話か武勇伝です。

 

 

そして、1か月くらいで部長から小規模コンペの誘いがかかりました。「9月の土日にコンペするぞ。お前も行くよな?」程度の誘いにイエスの返事をしたのですが、後日告げられた日程はピンポイントで友人の結婚式の日でした。

仕方なく断ったのですが、部長の中でドタキャン扱いになってしまって、私の評価は一気に地に落ちました。あいまいな日程で勝手に決められた日程だし、直前ではなくすぐに断ったのでドタキャンではないし、仕事でも部内行事でもないあくまで休日のレジャーを、冠婚葬祭より優先するなど考えられないのですが、この部内を支配しているゴルフを断ったということだけで私は日陰者になってしまいました。

 

 

その後は、あのゴルフをしない40代社員と同じように、いくら仕事を頑張っても評価されず、相手にもされない出世も昇給も見込めない立場になってしまいました。

ゴルフの付き合いのいい社員と私が同じミスをすれば私だけが叱責されやり玉にあげられます。同じ成績をあげても私は褒められることはありません。無視されるだけです。

最終的には、他の人のミスの責任を押し付けられ、他部署も交えた会議でも戦犯扱いされる始末で、結局私の心が折れてしまいました。

 

 

最終的に私はうつ病を発症し、休職の後入社1年経たずに退職しました。仕事的には当初の期待通りしていたつもりですが、ただゴルフがすべてという部署の環境に適応できなかったばかりに辞めざるを得ませんでした。
今でもゴルフと聞くだけで嫌なことを思い出すくらいになってしまい、クラブも退職後すぐに粗大ゴミに出しました。
仕事の本質と関係ない趣味にまで口を出してくる上司のいる部署は、和気あいあいとした職場よりも、ブラック職場の確率が断然高いということを学びました。