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通信業界、電話会社の代理店事務職、20代前半、女性

学校を卒業し、初めて入社した会社での出来事です。大手電話会社の代理店で本社と支社があり、私は支社の事務として勤める事になりました。私が入社したとき支社には女性の事務員が一人もいませんでした。毎日本社から女性の社員さんが数名ずつ交代で支社に手伝いにきていただくシステムの様です。業務内容についての資料やマニュアルなどは一切ありません。すべて口頭です。
部長「電話が鳴ったらすぐ取って、会社名を名乗って」
これが私に言われた最初の説明でした。応対の仕方や、どんな方からの電話が多いのかなどの説明はありません。そんな初日の午後に一本の電話が鳴ります。
私「お電話ありがとうございます。○○社でございます」
相手「□□です」
私「はい」

 

このとき私は□□さんの名前が聞き取れず、そのうえ名乗るだけで用件を何も言わない事に戸惑いました。少しの間しどろもどろした結果。
相手「社長の□□だ! お疲れ様ですだろうが! 部長いるか!」
と、怒鳴られてしまいました。その時ははっきり名前が聞き取れました。慌てて平謝りし、部長に電話をつなげました。

 

社長と話を終え電話を切った部長がニヤニヤしながら私に話しかけてきました。
部長「社長、名前しか名乗らないから。俺も怒られちゃったじゃん。今度気を付けてよね」
私は「はい」としか言えませんでした。社長の名前をあらかじめ確認しなかった私が悪かったのだと納得させてその日は終わりました。

 

 

入社して一ヶ月、少しずつ仕事にも慣れてきたある日のことです。部長から呼ばれたので向かうと言われたのが、
部長「今日から営業さんに給料渡して」

 

営業の方の給与は歩合制の現金払いで、新規契約を獲得したらその件数分支払うといった感じです。そのため私は初め、給料の入った袋を営業の方々に渡して回る仕事かと思いました。しかし実際は、
1.何十万円の現金を金庫から取り出す。
2.営業の方の申告した件数を確認。
3.お金の枚数を数えて手渡しする。
4.現金の増減チェックをしてデータ入力。
ここまですべて私一人で行う業務でした。

 

営業の方を待たせるわけにもいかないので、手早く作業をしなければなりません。そのうえ鳴った電話は私が一番に取るよう言われます。朝は電話が一番多いので、なかなか作業も進みません。そんな状態でデータ入力を終えるのは午前11時ころでした。何ヶ月かそんな状態が続いた私に部長が、
部長「もうちょっと早く入力終わらせてよ。社長に報告しなきゃいけないんだからさ」
確かに私は作業が手早くはありません。とりあえず「頑張ってみます」と答える事しかできませんでした。しかしその日以降、早く終わらせようとする分ミスが目立ち始めました。データ上の金額と金庫にある現金が合わないのです。会社のお金が合わないのは重大なミスだと思った私は正直に報告しました。すると、部長はおもむろに自分の財布から千円札を取り出し、金庫に入れました。
部長「これで合わせとくから作業続けて」
私はモヤモヤとした気持ちのまま自分の席に戻りました。このモヤモヤは収まるどころか日に日に増していくのです。
同じようなミスがあるたびに部長の財布から現金が投入されるのは嫌な気分でした。しかし与えられる仕事量は増える一方なのに人員は変わりません。部長は大声で楽しそうに趣味の話をしながらお菓子を食べているのに何度イライラしたでしょう。しかも私にお菓子を買いに行かせるのです。

 

 

そんな状態が数ヶ月続き、新たな動きが会社で起きました。大きな段ボール箱を男性社員が持ってきたのです。その中身は広辞苑のように分厚いファイルでした。部長は嬉しそうにニコニコしています。
部長「今度から、営業さん数名をこっちの業務に充てるからよろしく」
部長はファイルをポンポンと叩きながら私に言いました。もちろんなにが「こっち」なのか説明は受けていません。仕事を中断してファイルを開くと、中身は見たことのない申込書でした。しかもすべて個人情報が記入されてあるものです。
部長が言うには、申込書に書いてある電話番号を使って電話営業をするようです。見る限り今取り扱っている商品とまったく関係ない申込書なのにいいのだろうかと思いました。

 

 

部長「この申込書については電話で絶対口にしない様に。絶対だよ! ランダムにかけていますとか、タウンページをみてかけてますとか言いなさい。」
私が説明を受けた翌日、電話をかけるまえの営業さんたちに何度も繰り返すように部長が言っていました。
その時は部長の言葉に誰も何も言いませんでした。けれど明らかにおかしいです。これは個人情報の漏洩にならないのでしょうか。その言葉を無理やり飲み込んでしまいました。それよりも今日の仕事を順番に片付けなければ、という気持ちが強かったからです。
しかし電話営業が始まると、不信は広がるばかりでした。営業さんが電話をかけて繋がらなかったり、留守電になった人から電話がかかってくるのですが、一番に受話器を取るのは私です。その都度「どこでこの番号を知ったんだ」とか「この番号は公表していない。個人情報漏洩じゃないのか」などと言われます。私は部長が命令した通り嘘を言い続けました。

 

 

罪悪感とストレスで体調を崩し、一人では耐え切れなくなった私は両親に相談しました。両親はそろって「そんなところ辞めなさい」と言ってくれました。すると途端に体が楽になり、数日後会社を辞めました。
 数年後おもむろにその会社を調べてみたら倒産しており「やっぱりな」と思いながらも、仲良くしてくれた女性スタッフさんたちは大丈夫かなと心配にもなりました。