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私が20代後半に働いていた会社での話です。
いくつもの飲食店舗を運営する従業員100名ほどの会社でした。
私は知人の紹介で入社し、大きなスポーツ施設の中にある
飲食店のマネージャーを任されることになりました。
お店はアメリカンスタイルをうたったカジュアルなレストラン。
スポーツ施設の中ということで、平日はとても閑散としており
イベントが行われる週末ともなると他店から応援スタッフが来るほどの
賑わいでした。
しかし平日の来客がゼロとなる日もあり、1ヶ月での売り上げは
ホントに厳しものでした。
この会社は基本的に店舗運営を担当しているため、オーナーとなる
経営会社は別となります。
よって売上が悪くてもこの会社が特別損をするわけではないのですが、
やはり1店舗を任されている私としては悔しい思いでいっぱいでした。

 

 

ある日、各店舗のマネージャーが集まる会議が行われ、
もちろん私も参加となりました。
会議では各店舗の売上報告や、今後の売上目標など
私にとってはいが痛くなるような話ばかりでした。
会議が終了した後、社長に声を掛けられました。
社長は60代後半。従業員とは分け隔たりなく接する
フレンドリーな人なのですが、金に目がない腹黒い人間だ、
という噂もちらほら…。
そんな社長が、
「ちょっと時間ある?」と言うので、一緒に昼食を取ることになりました。
話はもちろん売上の話。
立地条件が悪い事は十分に理解していたようなのですが、それでも
「どうにかならないか?」
と私に詰め寄ってきました。
確かに、売上を伸ばす方法はいくらでもあるのかもしれませんが、
その時の私にはなにも思いつきませんでした。
しかし「どうにかします」と言うしか仕方ありません。
すると社長は
「では来週にでも何か提案してください」
と言い席を立ちました。

 
社長が帰って行く姿を見てホッとしたのも束の間、
頭の中は「どうしよう…」という思いでいっぱいになってしまいました。
しかしそのアイデアはお店に帰るとすぐにひらめきました。
スポーツ施設内に貼られた新しいイベント告知のポスター。
若手芸能人がスタジアムを使ってライブを行うと言うのです。
「お客さんが来る!」そう思い、あれこれと考えた結果、
レストラン以外での売上を得るために、スタジアムの近くで
売店を出すことを思いついたのです。
出演する芸能人は若い女性に人気のグループ。
お菓子類を売れば利用してもらえるはずです。
施設の管理会社へ場所を貸してもらえないかと問い合わせると、
心く了承してもらえました。
後は企画書を作成し、社長へ提案するのみです。

 

 

数日後、社長とのミーティングとなりました。
私の企画は採用、そのうえ売上目標達成となった場合には
私のいる店舗に全スタッフに賞与を出してくれると言うのです。
これはやるしかない!そう決意しました。
結果、目標を超える見事な売上。全スタッフは達成感に沸き立ちました。
閉店後、本社への売上報告をし社長の反応を楽しみにしていました。
翌日の朝早くに社長から連絡が入り、本社へ向かいました。
社長から「よくやりました」とお褒めの言葉をいただいたのですが、
そのあと信じられない言葉…
「賞与を出すのはまだ早いな。もう少し頑張ろう」
そう言ってニッコリと笑いました。
私は呆然としました。イベント当日に必死で頑張っていたスタッフに
顔向け出来ません。
結局、私は何も言い返せないまま話は終了となり、
社長から言われたことをそのままスタッフに伝えることとなりました。

 

 

その後の店は、また以前のように退屈な営業へとなってしまい、
退職する者も出てきました。
そして半年ほど経った時のことです。
本社の経理の方から、私のいる店舗で「人件費の架空請求」がでている、
という連絡をうけたのです。
私は何のことだかさっぱりわかりません。
店舗で働く従業員の給与は毎月、経営会社へ請求しています。
その経営会社から請求額に不審な点があると言われたようなのです。
スタッフのシフトに関しては、他の社員に任せていました。
問いただしてみたのですが、何もわからないと言います。
困ったあげく本社へ出向き、経理と調べることにしました。
すると、聞き覚えのない名前の従業員の勤務時間が4ヶ月分
プラスされているのです。
誰かがお店には存在しない従業員のタイムカードを作成し、
ほぼ毎日、出勤したかのように装っていたのです。
想像もしていなかった事態に言葉も出ませんでした。
その後の調査は経理部長、営業部長に任せることになり
何事もなかったかのようにお店へと戻りました。

 

 

数日後、営業部長からの連絡で犯人が判明しました。
シフト管理を任せていた社員だったのです。
私よりも2年ほど早く入社した年下の男性で、
仕事の出来る優秀な人材でした。
話によると、彼は社長からの指示でこのようなことをしてしまった、
と言うのです。
しして架空請求となっていた、タイムカードに記されていた名前。
実は社長の知人の息子さんだったのです。
本社には、履歴書まで提出されていたそうです。
私はこのことをきっかけに会社を辞めることにしたのですが、
架空請求の件は本社でうまく処理したそうです。
そして後日、この会社を紹介してくれた知人が私のところへ
謝罪にやってきました…