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私が以前勤めていた職場は、同じ県内に数店舗経営している地元では少し名の知れたパン屋です。
いつか自分のお店を持ちたくて製パンの専門学校に通い、その職場に就職しました。
初めの面接の時に、「残業はありますが残業代はお給料に含まれています。パン屋ですので夏場などは仕事が早く終わることも多くありますので、そこで調整がされています。」と説明されました。

仕事が始まると窯でパンを焼く仕事を任され、はじめのうちは必死で仕事を覚えました。
毎日窯の仕事をこなし、それが終わればパンを成形したり他の仕事や掃除をする毎日であっという間に1年が過ぎました。その頃は必死すぎて朝5時半から夜の20時過ぎまで働いていても何の疑問も持ちませんでした。

そして、仕事にもかなり慣れてきたころに本店への異動が決まりました。
本店へ移動すると、再び窯の仕事を任されました。
しかし、それまでこなしてきた仕事のやり方や作業の流れが今までと全く違い、また1から覚えることだらけでかなり辛かったです。
そして朝のうちに大量にパンを焼いて施設に配達するという仕事もあり、窯の者だけ朝の3時半や4時出勤も多々ありました。
さらに本店では大量注文が入ることもよくあり1日の作業がすべて終わってからパンを焼いて冷まして箱詰めをしたり、ケーキ屋も併設していたのでクリスマスやバレンタイン時期なども夜22時を過ぎても帰れないことがよくありました。
年に何度か半額金券バックセールという買った金額の半額分の金券がその場で返ってくるというセールもあり、その数日間はお客様もたくさんみえ通常の数倍は売れるのでそこでも帰宅するのは夜中でした。出勤時間も朝の3時や4時からになるのできつかったです。

夏場は仕事がない分早く帰れるかと思えば、売り上げが伸びないのになぜそんなに早く帰宅するのかと社長に言われ結局掃除などをして帰宅する時間は19時ごろです。
いくら長く働いたところで残業代はつきませんし、そんな環境なので常に人手不足で労働時間も長くなり、休みも週一の定休日以外はありませんでした。
体調をくずしても休めず無理をして仕事をこなし悪化させてしまう同僚もたくさんいました。
先輩が休憩も休まず仕事をしていたりするので、後輩が休憩をゆっくり取ったりすることなんてできないですよね。
自分のためではなく、後輩のためにも休憩やお休みはきちんと取らなければいけないなと感じます。
今思えばそのころはよくやっていたな…と思います。

飲食店は長時間労働でお給料が安いとはよく聞きますが、本当ですね。
夢を持っていたのでかなりの覚悟はしていましたが、それでもきつかったです。
一度、月のお給料を労働時間で割って計算してみたことがありましたが、自給に換算すると500円ちょっと、普通にアルバイトするよりも安くて笑ってしまいました。
でも、この仕事を辞めてまた1から新たな仕事を覚えるのが不安なのと、もしかしたらどこへ行っても同じなんじゃないかというあきらめもあり、なかなか転職しようという気持ちにはなれませんでした。
就職して1年で同期の者は20人から4人に減っていることには驚きましたが、それでもなんとか続けていました。

そうこうしているうちに、だんだんと景気が悪くなって原料の値上がりなどでパンの値上がりをしたことで売り上げが落ちてきました。
そしてその売り上げを何とかしようと半額金券バックセールを2カ月に1度くらいのペースで行うようになり、それを重ねることでセールを行ってもお客様が来店されないようになりました。セールの希少価値がなくなってしまったので当然ですよね。
売り上げが伸びないので社長は常にイライラしていますし、先輩たちもそれに当たられて全体の雰囲気もかなり悪くなりました。パンが売れないのに早くも帰れませんし、大量に作るとロスがでるのでそのころはいつも掃除ばかりしていたように思います。
そしてしばらくして数店舗がつぶれました。

私はそのあとしばらくそのお店で働き、4年でその会社を辞めました。
やはり先輩たちを見ていても独立するより先に精神的に追い込まれていく方もいましたし、あそこで長く働いても先が見えないように感じたからです。
そして何より独立してパン屋をやりたいという意志がうすれてきてしまったのが一番の原因だと思います。飲食店の闇の部分を見てしまったからなのか、単に自分の夢が薄っぺらい物だったからなのかはわかりませんが、あのパン屋を辞めてさらに新しいパン屋で1からやり直すという選択肢が浮かびませんでした。
どうせまた1から仕事をはじめるならパン屋でなくともよいのではないか…と考え、今では全く別の職種の仕事をしています。
悪いことばかりではありませんでしたが、今想像してもあの時の環境で再び働きたいとは思いません。
何より勉強になったのは、仕事はやりがいやお給料が多いに越したことはありませんが、休日や休憩時間がきちんとないと人間も会社もダメになってしまうということです。