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当時、希望の業種の就職先見つからなかった自分は、仕事が無いと言う事実に焦っていたのだと思います。
働いていれば何でも良いとばかりに、今まで経験した事も無い、製造業に応募する事にしました。
応募した理由は単純に条件が合ったのと、「初心者からでも指導します」と言う文言に惹かれてです。
即戦力を求めず、異業種からの転職でも一から指導して貰えると言うのは魅力的でしたし、新しい道が開けるかもしれません。
その時、自分は製造と言う業種のブラック企業についての認識が甘かったと言わざるを得ません。

面接当日、今までに無い手応えを感じ、良い感触だったと言えるのですが、それは罠です。
まず相手に働く事を承諾させる事がエサだと今になって思います。
終始和やかに話が進み「いつから働ける?」と言う問いに、「いつからでも」と答えると、「じゃあ明日から来て」とまさにトントン拍子です。
よくよく考えればいくらいつからでも働けると言っても、企業側で色々準備する物もあるでしょうから「明日から」と言うのはちょっと変だったと気づくべきでした。
その後、働くのを承諾させて断りにくくしてからの追撃。
労働条件や備考欄には、少々残業有り、と言うような記述がありましたので、その辺りは覚悟していました。
しかし社長さんの口から後出しじゃんけんにも程があるセリフが飛び出します。
「皆早めに来てるから、君も早めに来てね」。
いきなり労働条件を覆す言葉です。
たまに早出出勤が存在するならまだ理解できますが、どうやらこの工場ではそれが常態化しており、しかも拒む権利は無いようでした。
働く事を承諾してしまった為に嫌ですとも言えず、不安に駆られながらその日を過ごしました。

翌日、早出出勤をすると本当に工場の人達が既に働いていました。
毎日早出出勤など冗談ではありません。
実質、通常の勤務時間が長くなっているのと同じです。
その企業では熱処理をした細かい物を作って納品しているのですが、その熱は大体数百度程になるそうです。
耐火手袋か何かを支給されるのかと思いきや、軍手を渡されます。
頭の上にクエスチョンマークを浮かべていると、再びキツい言葉が。

「軍手を三枚重ねにしてね。それでも慣れないと熱いけど、慣れれば火傷の痕が硬くなって熱く無くなる」。
信じられません。
耐火手袋で無く軍手を重ねて対応と言うのにも驚きましたが、火傷前提で働くのですか。
もう帰りたい気分で仕事の内容を説明されます。
樹脂などの粉をプレスと熱で処理して、何かしらの部品を作る作業のようです。
粉物はマスクが無いと塵肺などの危険性があるのですが、皆さんマスク等はつけておられませんでした。
そこにトドメの一言。
「効率を上げる為に機械のリミッターは切ってあるからね」。
限界です。
機械のリミッターは少しでも危険度を抑える為についているはずです。
それを能動的に切って作業効率にウェイトを置いているとは、労働条件がどうとか言う話では無く、命に関わってくる問題です。
そこで働く事を諦める事は仕方ないと思います。
まさかと思い、従業員の皆さんに話を聞いてみると、自分の前に働いていた人も三日で退職した言う話でした。
死にたくありません、当然だと思いました。
製造業のブラック企業は、接客系や、営業系のブラック企業とは違い、命に関わってくる危険性の高い仕事だったのです。
労働時間だとかノルマだとかがどうとか言うのとはレベルが違います。

翌日自分は退職を願い出ました。
これはこれで貴重な経験だったとは思いますが、働き続けている方達の健康は今でも心配です。